06/17/2006    がくえん考−1
その中学校は、小学校と併設で、中学生だけで21名。小学生は
6、7名。最初に聞かされていたのは、全員がいわゆる「孤児」である、
ということだった。詳しい事情はわからないが、送ってきた
現地の地図と予定表の中に、留意事項として「劇中、およびトークの
中で”親子の愛情”に関する話題は避けてください」とあった。
生徒は、学校と道ひとつ隔てた寮で生活しており、毎日、寮と学校の
往復しかしないという。
現地に着いたら、確かに道ひとつ隔てて「がくえん」とだけ書かれた
建物がある。往復って、ほとんど敷地内だぜ。

これまでもいろんな学校に行った。行く前にはどういう校風かという
レクチャーをマネージャーから受けるのだが、『田舎で純朴』とか
『都会ッ子で、多少、やんちゃ』『引きこもり児童多し』とか聞いてても、
行ってみたら中坊はみんな中坊だ。ピアスしてようが、芝居の間に
ウロウロしようが、どこの中坊にもさほど大した差異なし、というのが
実感である。
が、今回は少し考えさせられる。
『留意事項』なんて書いてたの初めてだし。

教室に入って聞くと、すぐそばにいわゆる「普通の」小学校も
あり、最近は物騒だから大人が登下校の時、パトロールとかするのだが、
なんとなくこの中学の回りはみんな、パトロールもとくにせず、
「子供にもあまり近寄らせない」ような空気があるのだという。

うちの学校公演『オーディション・メイト』は、とある劇団のオーディション
を何回も受け続ける女優たちの物語だが、劇中のオーディションに、
見ている生徒も強制的に参加させるというシーンがある。
舞台に連れて上げて、例えば拳銃で撃たれたリアクション、なんて
ゲームをさせる。
どんなに大人しい学校でも、やはりこのシーンは一番盛り上がる。
あまり生徒が積極的じゃなくても「ちょけて」そうな先生が必ず一人
いるから、その人を引きずり上げる。そしたらもう、確実にウケル。
鉄板ネタと呼ぶ所以である。

今回は生徒の数も少ないし、聞かされていた状況も複雑なので心配
したが、杞憂に終わった。もしかしたら、今までで一番盛り上がったかも
知れない。
とにかく、生徒はみんな行儀もいいし、よく拍手して、よく笑って、
楽しんでいる。素直で、実に表情がいい。
さあ、オーディションを受ける人!!と募ったら、後ろで一人、先生が
付き添っていた小学4年くらいの男の子が真っ先に手を上げた。
どうも、一人離れた場所に付添付きだし、なにか多少の問題が
ある子(情緒不安定、とか。どこの学校にもだいたい一人はいる)なのかも
知れないが、まわりの先生が驚くほど積極的に、自分で走って舞台に
上がってきた。

オーディションの内容は「アクションでリアクション」という、
悪漢に殴られたあとのリアクションをやらせるのだが、その子は
悪漢(鴨原正浩)にジャンピングキックし、すぐさまガッツポーズを
見せた。そりゃすごかったぜ、見せたかったね。
先生方も、後方で驚いたみたいに立ち上がって拍手。
オレは、芝居ってのはこういう時に一番、影響力を発揮するものだと
いつも思ってるが、それをまざまざと見せられた。収穫だったなー。

舞台は盛り上がり、無事に幕が下り、校舎の片隅に先生が用意して
くれたバケツの前で煙草吸ってたら、オーディションに真っ先に出てくれた
中3の生徒会長くんが走ってやってきて、「ありがとうございました!」と
頭を下げてくる。「おお。ありがとーな」。
教室で着替えてると、教員らしい人が来て、「普段、みんな外に出れない
ですから・・ほんとに楽しんでました。ありがとうございました」。

公演前にはいつもオレが前説をする。
不思議だったのは、「この中でお芝居を見たことがある人!?」と
聞いたら、誰も手を上げない。「じゃ、好きなドラマとかは!?」と
聞くも無反応。「見ない」という感じではなく「なに、それ?」みたいな
キョトーンの表情である。
・・そうか。よく考えたら、この子たちは、そんな自由にテレビなんか
見れる環境に生活してないのだ。全寮制だから、テレビなんか談話室
にひとつ、それも決められた時間に見る、ってことだろう。
芝居なんか、学校と寮の往復だもん。見るわけないよな。

子供はみんな、ドラマもバラエティも好きなだけ見てるという思い込み
が、オレにあった。そんなわけない、そうだよ。
思い込むなんて最低だな。
もしもそれがホントなら言わせて欲しいけど(それはないと願うけどさ)、
この学校の子供たちを特別視するような空気があるなら、そんなの止めて
欲しいよ。
だって、こいつら、ホント、よく笑ってくれたぜ。
すげえいい目して、しっかり舞台見てたぜ。
最後までちゃんと椅子に座って、拍手なんかビシビシしてくれて、
ちゃんと真っ直ぐ育ってるぜ。
オレら、舞台で嬉しくって仕方なかったよ。
普段、客席でハスに構えて腕組して舞台見るような醜悪な演劇オタクを
相手してるオレらから見たら、子供の真っ直ぐな目がどれほど綺麗に
思えるか。まともに親がいたって醜いやつは醜いよ。そうだろ。
でも、こいつらは違った。
なあ。ガキに向かって余計な決め付けすんのはやめとこうぜ。

ありがとう、って言わなきゃいかんのはこっちだったよ。
06/16/2006    営業考‐3
20060616123016
午前中のゲネも滞りなく終了。本番まで教室にて待機。当然タバコ厳禁。
06/16/2006    営業考‐2
20060616121220
学校の講堂、舞台袖で出番待ちする人。
06/16/2006    営業考‐1
20060616102137
本日は半年ぶりに学校公演である。藤井寺の某中学校、本番は午後1時半。観客は生徒・教職員合わせて80名。出し物は鉄板ネタ『オーディションメイト』。楽屋は教室。只今女優さんメイク中。
06/14/2006    パーティ考−3
「菱田信也さんの読売文学賞受賞を祝う会」をやります、と
連絡もらったのは5月の末、である。演出家の吉村正人さん、
舞台美術家の竹内志朗さんが発起人になって下さるという。
なんせこういうのは自分のことだし、自分がどうこうできるもの
でもないから、「はあ・・・。」とよくわからない返事しか
してなかった。

吉村先生は商業演劇を中心に活躍されている名演出家で、竹内先生は
あらゆる舞台・セット美術のみならずテレビ番組のタイトル
題字「必殺」シリーズ、「新婚さんいらっしゃい」「プロポーズ
大作戦」から「探偵!ナイトスクープ」「熱闘甲子園」「赤かぶ検事」
・・・と全部、竹内先生の書いたものである。題字界のキダタロー
である。そりゃもう大御所だ(ちなみにパーティ考−1,2の写真
にある会の題字も竹内先生、しかもその写真まで撮ってくださったのだ、
罰当たるぜ。会の題字は終わってからしっかり記念にもらってきた。)。
そのエライ人二人がなぜかいつもオレの書いた芝居を見に来て誉めて
下さる。のみならず竹内先生はずっと「紙風船団」の舞台美術を
担当され、吉村先生は今回の「ええお湯だっせ」の演出である。

2月に賞をもらってから、東京での贈賞式パーティはあったものの、
なんせ右も左もわからない状態だったし、大阪に帰ってきて三ヶ月以上
経ってなにもしないというのは菱田が不憫だと思っていただいたらしく、
会場は京橋・IMPビルの26階にある夜景爆発レストランだという。
しかしなんせいきなりのことだし、パーティやるつってもオレは
ほとんど業界で人付き合いのない人間だし、そんな2週間もないのに
会なんかできるんかしらと思ってた。

とりあえずオレはオレで40人ほど身近な役者にメールで案内
したが、会費もかかるしなあ、そういうの自分から誘うのもなあと
思いつつ。役者もなあ、そんなの呼ばれたって別に芝居やってるからって
わざわざ金出して出て行く義理もないしな。そもそもそんなに間柄、
近しくないし。で、「このメール見ても都合悪かったら見なかったことに
してくれ」って送ったら、案の定、7割からは無視されたよ。
さすが人望ないぜ、オレ。

が、なんだかんだ言うてるうちに司会は紅萬子さん、だとか、世話人を
三枝師匠だとかってことになり、なんだか妙に大事になってしまった。
何人かの心優しい役者も付き合ってくれることになり、で、当日。

そもそも、冠婚葬祭は苦手だ。芝居の打ち上げだって大嫌いだし、
酒飲まないんだからパーティなんか行ったこともない。
ここんとこ働き詰めて、挙句にぶっ倒れてたし、作家だなんだっつっても
建築現場に出たら若い鳶のあんちゃんにケツ蹴られてんだもん。今日は
パーティの主役です、とか言われても、あまりのギャップの激しさに
気分が付いて行かんわ。
会場に着くと、そりゃもう立派にパーティだわ、こりゃ。

続々と人がやってくる。それもなんだか業界関係者の、偉い感じの人
ばっかである。オレが知らない人なのに、なんで集まってきはるんか。
紅さんの司会で始まり、いきなり挨拶が関西俳優協議会の会長
の田中弘史さん。偉い人。
で、呼び出され、乾杯の音頭取ってくださったのが朝日放送プロデューサー
の森山浩一さん。偉い人だよ。なんでこんな人が来てくれてんのか
と思うも、よく考えたらオレは二十歳の時、森山さんが演出した舞台
「大阪レジスタンス(桂三枝・原作)」の演出助手をやってたのだ。
ほぼ二十年ぶりの再会である。
「・・・当時、菱田君に”卒業したらどうするんだ、なんならABC
に来るか”と聞いたら”いえ。もう少し芝居をやりたいんです”」と
答えた」・・と、今明かされるちょっといいエピソード。うんうん、
そういうこと・・・。ん?オレ、森山さんにそんなこと言われたっけ?
しかも断った?ABCに誘われて?・・・いやあ、それはないと思う
けどなあ・・。放送作家になろうとしてた馬鹿学生だったもの・・・。
そんなええ話、断るわけないんだけどなあ・・・と思いつつ、しかし
御清聴の皆様も「さすが!!若き日に芝居を選んだ菱田!!」という
顔してるしなあ・・。う〜ん・・。でも、絶対、誘われてないと思う・・。

宴会始まり、あっちゃこっちゃで名刺交換会だ。こりゃもう祝ってもらって
んのか営業やってんのかわからない。新歌舞伎座のプロデューサー氏、
MBSの偉い人、シアターBRAVAのプロデューサー氏、新聞各社の
記者様、えー、あとは制作会社にプロダクション関係・・・。
・・・そうなんだよなあ。最近、忘れかけてたけど、オレ、書き手
なんだよな。

祝電ご披露。吉本新喜劇の末成由美さん。やっぱり文面は「おいでやして
おくれやしてごめんやっしゃ」であった。あと、東京から久保田磨希。
「ブスの瞳に恋してる」も打ち上げ、秋には「大奥・ザ・ムービー」公開。
偉うなったもんや!!パチパチ。

会も終盤に入り、札幌から伊丹に着いてすぐ直行してくださった桂三枝
師匠にも挨拶いただき、会も盛り上がった。師匠はすぐに打ち合わせに
向かっていったが、相変わらず「盗作しとらんやろな」と笑いながら
聞いてくる。微妙です、と答えておく。

もしもオレが本当に劇作家と名乗っていいのなら、やっぱり恵まれた、
幸せな状態なんだろうなと思う。
会もとどこおりなく終わり、来てくれた荒木優子、市村宝子、岡崎美知子の
女優陣と階下のミスドで一服。ここで今日始めて物を飲み、やっと
物を食えた。
荒木は、なんだか芸大の学生が撮ってる自主映画に出てて、あんまりの
段取りの悪さとクリエイティブさの欠如に辟易してるらしい。
「・・・そりゃ学生には仕事じゃないんだから、仕方ないんだよ」

あんなステキなパーティなんかやってもらって、終わってからあらためて
役者と話すのは結局「いい仕事したい、それだけ」、なんである。
そうだよな。もしもホントにオレが作家なら、今日来てくれた、ずっと
支えてくれてるあんたらと、もっともっといい仕事、やりたいと思うよ。

あ、そうだ。今夜はW杯の日本初戦か。
なのに、よく、わざわざあんなにみんな来てくれたもんだ。
そういえば、東京のパレスホテルで贈賞式のあった夜、荒川静香が
金メダルを取ったんだっけ。
なんか、オレのやることはデカイイベントとよく重なるよなあ。

翌朝。午前5時に起きて、神鉄乗って山奥の現場へ。
カンカン照りの中、鉄骨をあっちゃこっちゃと運ぶ。
身体がからっからになって、飯場でガバガバ水を飲んで倒れてると、
職人のおっちゃんがテレビのタレントの話で盛り上がってた。
会話の中に、昨日、オレのパーティに来てくれた人の話も出たりして。
ガハハハハと笑うおっちゃんらは、すげえ楽しそう。灼熱地獄の
疲れも、和らぐんだよ。
・・・オレは、やっとわかったような気がするよ。
長い間、オレ、なんで芝居なんかやってんだろと不思議で仕方なかった
けど。こんなの、いったい何の役に立つんだよと思ってたけどさ。
いるんだよ、絶対。芝居もタレントもテレビもスポーツも、みんな
この世に絶対、必要なんだ。間違いないよ、なくちゃダメな仕事なんだよ。
そいつをわからせてくれてる、芝居の神様に、オレは感謝するよ。

ご出席くださったすべての皆様に感謝いたします。
本当に有難う御座いました。

06/13/2006    神鉄考‐1
20060613070908
一夜明けたらシンデレラは再び地味な日雇いの人。神鉄なんか生まれて初めて乗るぜ。
06/12/2006    パーティ考‐2
20060612234901
有り難いことである。皆様に深謝。ビッグゲストも登場の怒涛宴会リポートはまた後日。
06/12/2006    パーティ考‐1
20060612190018
本日はこんなことである。詳細リポートは後ほど。
06/10/2006    微熱考−2
微熱どころか39度近い熱がもう3日目だ。

しかし寝てばっかりもいられないので仕事に出、そいでまた
寝込むの繰り返しである。
どうも副鼻腔炎を併発したらしい。熱も鼻の奥から来てる感じ。
昔、やらかしたことがあるので症状に覚えがある。
さっきやっと薬屋に行って葛根湯を買う。
鉢巻に冷却材を包んで頭に巻いてウロウロしてると、あまりの見た目
情けなさ感爆発で凹む。
病は気からと言うが、後ろ向きなことばっかり考えてしまう。

月曜日には治しておきたい。
06/06/2006    微熱考−1
午前10時30分、大阪リサイタルホールへ。
地下の喫茶店で、本番収録前の桂三枝師匠に面会。

モーニング食べながら、例の村上某の話題。
その村上某に「天罰下る」と発言した星野某氏の話題・・・。
ふと師匠が取り出した、ご自分の携帯に入ってる画像を
「ほれっ」と見せてくれた。
な、な。師匠と、あの「盗作画家W氏」との2ショット写真である。
どこぞかのパーティで撮ったらしい。
「菱田〜。君、大丈夫やろな〜。盗作しとらんやろな〜」
「多少ヤバかったですけど、なんとかセーフです」

師匠とは来週また会うことになるかも知れない。

梅田まで歩いて、JR乗って帰ってきたら、やっぱりクラクラする。
相変わらず微熱、引かず。グルングルンする。

一息入れようと駅の喫茶店に入り、村上某のことが一面に出てる
今日の朝刊を読んでいたら、すぐ隣に座った、70くらいの
一見金持ち風のじいさんがいきなり話し掛けてきた。
「こいつ、保釈されよったで」
「・・・え?・・・・」
「10億出して保釈されよった」
「いつですか。」
「さっきや。」
「そんなに早く?」
ニュースを見てないから知らなかった。昨日逮捕されたのに、
そんな早い展開なのか。
「代議士に口、きいてもろてな。もう、出よる」
「そうですか・・・」
「最初から話ついとったんや、検察と。」

早く帰ってニュースを見なければ。
急いで帰ってTV付けたが、そんな話、これっぽっちも出てない。

なんだ、あの謎の爺は。
熱が上がっていく。
世間に触れて火傷したか。

目眩がして、そのまま寝た。

06/04/2006    推敲考‐1
20060604115423
煮詰まってますinロイホ。改訂台本締切は本日16時半。睡眠不足で体調頗る悪し。しかし解決の予感大。病み上がりのどしょっ骨に賭ける。若者よ劇作家なんか目指しちゃいけない真面目に勤めよ。
06/03/2006    塵収集車考‐1
20060603165119
こいつの実力にはシビれたぜ
06/03/2006    日雇い考‐6
20060603125130
本日須磨の高台から海を眺めつつ廃品の回収。5日月曜が改訂台本の締切!ヤバい、海眺めつつ崖っぷち。『ええお湯だっせ』をご覧になる皆様。ラストの泣き場面は荒ゴミ運びながら作ったものと思いながらご覧下さい。
06/01/2006    新歌舞伎座考‐1
20060601144507
38度の熱ひきづったまま、大阪ミナミの新歌舞伎座へ。明日が初日の芝居のGP見学。演出は宮田慶子氏。3ヶ月ぶり。演出助手の阿部さんとは5ヶ月ぶりか…。今年は本当に早く過ぎていく。